「互角」(意・互いの力が拮抗している)ということばがあります。
このことばの語源が「両側に伸びる牛の角の長さが同じであること」と知り、それは是非とも写真に撮って『目でみることば』に掲載したいと思いました。しかし、この角がある牛を探すのに、大変苦労したのです。牛の角は、乳牛でも肉牛でも、飼育のし易さから、若いときに切られるようで、方々の牧場に問い合わせても、なかなか角がある牛がいない。
これはダメかもな……と、ちょっと思っていた最中、上野動物園に行った時に、偶然、出会えたのです。
園内の「子ども動物園」に、見島牛なる表示。これはもしや!
いた!角のある牛!
この上野動物園にいた牛さんは、島根県の見島という島にいる農耕や運搬を手伝う見島牛の初春くん。見島牛は、離島に生息しているため、外国の牛や、改良された和牛と交配されることがなかったため、人に飼われている牛のなかで、唯一、日本在来牛の特徴を持ったまま今日まで残っているという貴重な存在なのだとか。日本在来牛としても貴重だけど、立派な角を持っていることでも貴重な初春くん。本の中では、迫力ある写真で「互角」を紹介していますが、ぜひ上野動物園に行ったら、会いに行ってあげてください。