目でみることばblog

ことば探検プロジェクト

もっとも苦労したのは「しっぺ返し」

今回『目でみることば2』に収録したことばの中で、もっともその写真を撮るのに苦労したのは「しっぺ返し」でした。

《「しっぺ」は「竹篦(しっぺい)」の転で禅宗で用いる竹製の細長い棒のこと。座禅の際、師が雑念で姿勢の乱れた弟子を戒めて打つのに用いる》

しっぺの語源については、多くの書物でこのように記されていて、とにかく竹篦というものを見つければいいな、と思い、かなりの数のお寺さんに「竹篦ありませんか?」と尋ねていったのです。しかし、どこにもありません。実はパート1のときも探していたのですが、結局見つけられず、持ち越ししていたのです。見つけるきっかけになったのは、あるご親切なお寺の方からいただいたメールでした。

《竹篦についてですが、当方には正式なものを所有しておらず、坐禅中に使っているのは「警策(けいさく)」呼ばれる別の種類のものものです。そもそも、竹篦は師家(しけ)が雲水(修行者)を教化するために使うもので、坐禅会では使われません。曹洞宗の寺院では法戦式で使われるかもしれませんので、そちらでご確認頂いた方が正しい情報が
得られるのではないかと思います。》

そうなんです。竹篦というのは、座禅のときに使う竹の棒とばかり思っていたのですが、これは「警策(「けいさく」あるいは「きょうさく」)」であって、竹篦ではないのです。僕も世の中のいくつかの本も勘違いをしていて、それで禅宗のお寺を中心に探していたのですが、それが間違いだった。こう指摘していただき曹洞宗のお寺で探して、今回、取材に応じてくださった新宿の長光寺さんに行き着くことができたのでした。

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これがようやく巡り会えた「しっぺ返し」の語源の竹篦。本当にここに至るまで長かったので、見せてもらったときには本当に感動しました。で、そういえばあの本は……と『広辞苑』を見ると、ちゃんとこの写真通りのイラストが掲載されていて「おぉさすが!」と思ったのです。この本を作っていると『広辞苑』の素晴らしさに気付く機会が何かと多いのでした。

 

世の中の語源